高校2年の夏、息子は東大を目指すと決めました。それまで特に口にすることもなかった「東大」の文字が、ある日突然、現実の目標として息子の口から出てきたのです。
その日から、わが家の受験戦略は大きく変わりました。
滑り止め、どうする?という現実
東大を目指す受験生の多くが、滑り止めとして早稲田や慶應といった難関私大を併願します。
でも、わが家はシングルマザー家庭。私立大学の高額な学費に加え、地方出身であるため一人暮らしの生活費も必要になります。正直に言えば、「早慶に合格しても、通わせられるかどうかはわからない」というのが現実でした。
それでも私は、息子の未来に制限をかけたくありませんでした。シングルマザーという“親の事情”で、息子にはさみしい思いも我慢もさせてきた。だからこそ、大学の選択肢まで「お金」を理由に狭めたくなかったのです。
「もし早慶を受けたいなら、奨学金でも教育ローンでも利用して、なんとかするから」と息子には伝えていました。
息子の決断──「東大一本でいく」
ですが、息子はわが家の事情をしっかり理解していました。決して「早慶も受けたい」とは言いませんでした。そして、私立大学は受けず、前期は東京大学、後期は国公立大のみに絞るという選択をしたのです。
この選択は、決して軽いものではなかったと思います。
前期で東大がダメだったらどうするか──。当然ながら、後期でどこを受けるかは大きな課題でした。そんなとき、息子は「医学部も選択肢に入れようかな」と言いました。
医学部を考えた理由と、やめた理由
息子が医学部を考えたのは、東大と偏差値帯が近く、後期でも受けやすい国公立の学部だったからです。でも、息子自身が医学や医療に強い興味を持っていたわけではありません。
単純に「東大がダメだったら、偏差値的に狙えるところ」という消去法的な理由でした。
私は看護師です。だからこそ、医師という職業がどれほど重い責任を背負うものか、身にしみてわかっています。
目の前の患者さんの命と、毎日向き合う仕事。深夜でも緊急の呼び出しがあり、土日も関係なく働く。ときには患者さんやご家族の怒りや悲しみにぶつかりながら、それでも「人を救う」という使命のもとに立ち続けなければならない職業です。
正直なところ、息子が医師になったら──と一瞬、夢を見たのも事実です。
「開業医になったら、私もそこで働けるかも」なんて、淡い期待を持ったこともありました。
でも、息子はすぐに気づいたのです。「自分が心からやりたいと思う仕事ではない」と。
偏差値や安定した収入といった条件だけで選ぶべき職業ではないと、息子なりに深く考えて出した答えでした。
私は、その決断を尊重し、むしろ誇らしく思いました。
選択肢が限られた中で
私立は受けられない。医学部も違うと感じる。
そんな中で、息子は「東大一本で勝負する」と決めました。正直に言って、合格発表までは心の中で何度も「ごめんね」と思いました。
もし東大に落ちたら…。
併願校がないというのは、精神的に大きなプレッシャーになります。それを背負わせたのは、私の経済状況であり、家庭環境です。
結果的に、息子は合格しました。
でも、その結果が出るまでの間、そしてその決断に至るまでの過程には、息子なりの葛藤や覚悟があったと思います。
息子の決断は、私の誇り
どんな環境であっても、自分の状況を正しく理解し、納得のいく進路を選ぶというのは、とても難しいことです。
「本当にやりたいことは何か」
「自分の能力を、どこでどう生かすのがいいのか」
そうした問いに、真正面から向き合った息子は、本当に立派だと思います。
東大に合格できたことはもちろん嬉しい。でも、それ以上に、家の事情を言い訳にせず、自分なりに考え、納得して進路を選んだこと。
その過程こそが、母として本当に誇らしいのです。
これからどんな未来が待っているのかは、まだ誰にもわかりません。でも、きっと息子なら、自分の意志で、自分の道を切り拓いていけると信じています。
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