東大受験という大きな挑戦に臨んだ息子の受験の年は、まさに新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた真っただ中でした。
家庭に受験生がいるという状況の中、私は看護師として感染リスクと隣り合わせの日々を送り、常に「家にウイルスを持ち帰らないこと」との闘いでした。
看護師という立場と家庭の板挟み
当時、私が勤務していた病院には、連日コロナ陽性患者が多数入院していました。感染者は「レッドゾーン」と呼ばれるエリアで隔離管理されており、看護師はそのゾーンを交代で担当します。
高齢者が家にいようと、基礎疾患のある家族がいようと、小さい子どもがいようと、あるいは受験生がいようと、担当の割り振りに特例はありません。感染対策は徹底していたものの、どれほど注意しても次々とスタッフが感染していきました。
私も常にN95マスク、ゴーグル、防止、手袋、ガウンを装着し、感染症マニュアルに従って業務を行っていましたが、不安が消えることはありませんでした。
「もし私がウイルスを家に持ち帰ってしまったら——」
その恐怖は、日を追うごとに大きくなっていきました。
受験生を守るという覚悟
感染拡大が続く中、学校や予備校から「感染者が出た」という連絡が入るたび、息子が濃厚接触していないか、感染していないかと神経をすり減らしました。受験が近づくにつれ、私自身の緊張感はピークに達します。
受験の1ヶ月前には、思わず「いっそ今、家族全員で感染してしまった方がいいのではないか」とまで思いました。それほどまでに「受験当日に感染する恐怖」は重くのしかかっていたのです。
息子は何年もかけて、東大合格という目標に向かって努力してきました。その姿を間近で見てきたからこそ、私のせいで台無しにしてしまうわけにはいきませんでした。
感染したらどうなる?追試の実情
当時(令和5年頃まで)、新型コロナウイルスに感染した場合、一部の大学では追試の対応がありました。東京大学でも、息子の受験した年には「受験当日に感染した場合は、共通テストの成績や調査書で合否を判定する」という措置が取られていました。
しかし、その判定内容は非常に不透明であり、通常の受験よりも明らかに不利となる可能性がありました。つまり、「感染=受験のチャンスを失う」という恐れは、現実的なものだったのです。
さらに、令和6年以降は、「体調管理も含めて受験の一部」とされるようになり、国立大学の個別試験(いわゆる二次試験)では、コロナ感染による追試の措置は取られなくなりました。共通テストには追試があるものの、個別試験は一発勝負です。
どれだけ努力してきても、当日の体調不良で受験すらできない——
これが今の受験の現実です。
受験に向けた家族の連携
このような状況を乗り越えるためには、家族の協力が不可欠です。食事・睡眠・感染対策・ストレスケアなど、できる限りのサポートをし、受験当日に万全の状態で臨めるよう、家庭全体で努力する必要があります。
我が家では、息子の部屋は極力清潔に保ち、家族の外出も必要最小限に抑え、共用スペースの消毒も日課にしました。もちろん、私自身が感染しないために、業務後のシャワーや着替えも徹底し、帰宅後もできるだけ同じ空間で過ごさないようにしていました。
結果としての合格、そして感染
幸いにも、息子は無事に受験当日を迎え、東大に合格することができました。緊張と不安に満ちた毎日がようやく報われた瞬間でした。
けれど、皮肉なことにその数ヶ月後——
息子が大学の夏休みに帰省してきたタイミングで、私は患者さんからコロナをもらってしまいました。そして、なんとそのウイルスを息子にうつしてしまいました。
世間では、コロナの流向が過ぎた頃です。「何で今なの?」と思いながらも、「受験じゃなくてよかったね」と2人で苦笑いしました。
最後に:受験はチーム戦
受験は個人の戦いのように見えて、実は家族全員の協力が必要な「チーム戦」です。とくに感染症という予測不能なリスクがある中では、本人の努力だけではどうにもならない要素が数多くあります。
感染症対策、体調管理、メンタルサポート。
どれもが合格への重要なピースです。
今、受験生を支えるご家庭の皆さんへ。
あなたの支えが、きっと受験生にとって何よりの安心と力になります。どうか、家族一丸となって、この試練を乗り越えてください。
受験生の親ができるサポートとは?


